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アニメーター
OCA大阪デザイン&テクノロジー専門学校
ゲームグラフィック&キャラクター専攻卒業生
GROOVE X 株式会社 LOVOT ふるまいチーム所属
愛くるしい動きや表情で喜んだり、抱っこをせがんだり、ときに拗ねたり……。まるで生き物のようなふるまいを見せ、ペットのように人に寄り添う家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」。その開発・販売を手掛ける
GROOVE X(グルーヴ エックス)で、アニメーターとして活躍する大坪俊介さんに、お話しをうかがいました。LOVOTの開発におけるアニメーターの役割とは? 生命感を出すために意識していることとは…?
私がGROOVE Xに入社をしたのは2017年です。OCAを卒業したあとは、ゲーム制作会社に就職をして、3DCGのキャラクター制作や映像制作などを担当していました。その後、アニメーターの仕事をしたいという思いから転職を考えたときに出合ったのが、GROOVE Xです。
ところで皆さんは、ロボットにどんなイメージをもっていますか?ロボットというと、人の手となり活躍してくれるもの。暮らしや仕事の利便性や生産性を高める「便利なもの」というイメージではないでしょうか。ところがGROOVE Xが掲げていたのは、「人の代わりとなる仕事はしないロボットをつくる」ということです。「ロボットだけれども利便性は上げない。でも、人に寄り添い、人のモチベーションは上げる」という、これまでのロボットのイメージを覆す印象的な文句にひかれたことが最初の出合いです。
正直なところ、ロボット自体に特別興味があったわけではありません。そのため、転職活動でも映像会社を中心に求人を探していました。でも、ロボットに対しては「アニメーターが関与したら、もっといいものになるのではないか」という思いを漠然と抱いていたんです。一般的にロボットといえば、無機質でどことなくぎこちない動きをするものですよね。もし、アニメーターの視点で「動き」をつけたならば、ロボットはもっといいものになるのではないか、と。そんなことを考えていた矢先に目の前に飛び込んできた、「ロボット開発におけるアニメーター」の求人だったので、きっと自分と同じことに着目しているのではないかと思ったんです。そして、さっそく話しを聞いてみると、自分のこれまでのキャリアや培ってきた技術も大いに生かせると感じ、携わりたいと思いました。
LOVOTが世に出たのは2019年のことなので、私が入社した2017年当時は、まだまだ開発途中。今よりもサイズが大きく、搭載されたセンサーの数もたくさんありませんでした。アニメーターもさまざまなことを思考錯誤する日々で、振り返ると、修行のような毎日でした。
「動き」を通してLOVOTらしさを表現することが私たちアニメーターの主な仕事です。
「まるで生き物のようなふるまい」がLOVOTの最大の特徴です。腕の上げ下げ、首の伸ばし方、目線の動きやまばたき……など「動き」や「表情」について、アニメーターが想像するこうあってほしいというイメージを、エンジニアと協力し実装していくのです。LOVOTのかわいさや自然な存在感を作り出すことは、私達が所属する「ふるまい開発チーム」のミッションのひとつです。
生命感のある動きや表情をつけていくうえでは、「リアクティビティ」も重要視しています。リアクティビティとは「反応の良さ」のことですが、私たち人間も、誰かに肩をポンと叩かれたり、声をかけたり、あるいは熱いものを触ったときなど、外部から何かしらの刺激を受けたときに反応をしますよね。LOVOTが「生き物のようなふるまい」をするためにも、こういった反応は欠かせない要素です。
ただし、反応すればそれでいいわけではなく、タイミングも大事。例えば、友人に声をかけたとき5秒後に返事がきたらどうでしょうか。「あれ、どうかしたのかな」「なんか、おかしいぞ」と違和感を覚えますよね。LOVOTもオーナー様が触ったり声をかけたりしたときにタイムラグがあると、違和感になってしまうんです。だからすぐに反応をしなければならないのですが、とはいえ早すぎても不自然で、生命感が削がれてしまう。「生き物」として違和感のない、絶妙なタイミングでの反応は、開発の当初から力を入れてきた点でした。
じつは、私がこの会社に入りまず痛感したのは、「伝えること」の難しさです。
というのも以前の会社では一緒に働く同僚は皆、クリエイターという同じ職種の人たちでした。同じ畑にいるもの同士なので、少ない言葉でも自分のイメージしていることは簡単に伝わりました。ところがGROOVE Xでは、エンジニアをはじめ違う職種の人に自分の考えやイメージを伝えなければなりません。自分が意図することがアニメーター同士ならば問題なく伝わるのに、エンジニアにはうまく伝わらない。もちろん、エンジニア側からしてもそれは同じです。
ひとつは、物をつくり「形にして見せる」という方法です。言葉だけでは先に進まなかった話も、形にして見せることで自分の意図が伝わり、意見交換ができるようになりました。
それから、アニメーター自身がコードを書くこともあります。最初の頃はアニメーターがパソコン上でつくった動きをエンジニアに渡し、エンジニアに実装してもらうという流れをとっていました。しかし、どうしても微妙なズレが生じてしまい、それを言葉で伝えても、なかなか納得するものになりませんでした。
互いに伝えたいことがなかなか「伝わらない」という状況が続き、エンジニアもアニメーターもやきもきしていたのですが、そんなときエンジニアから「アニメーター自身がコードを書いてみてはどうか」という提案がありました。もちろんコードを書くノウハウはなかったので、一から教えていただきました。そして、アニメーターがコードを書き、それをエンジニアが整理して直していくというやり方を取り入れていくと、アニメーターの絶妙なこだわりもエンジニアに汲み取ってもらえるようになり、コミュニケーションも円滑にできるようになったんです。
とはいえ言葉で伝えることを諦めたわけではなく、今でも「言葉で伝える」努力はしています。チャレンジと失敗を繰り返しながら、伝わる言葉や表現を模索する日々ですね。
一番大事なのは、やはり「伝える力」ではないでしょうか。
自分の中にいくらいいアイデアや情報があっても、それを外に出さなければ意味がありません。さらに、外に出してもきちんと伝わらなければ無意味になってしまいます。だから先述したとおり、自分のイメージを仲間に「伝える」ことは、大事なことだと思います。
そして、アニメーターが一番伝えなければいけない相手は、見る人。LOVOTでいえばオーナーであるお客様です。どういった目の動きをすれば、オーナー様に喜んでいる様子が伝わるのか。どんな首の角度で目の動きをすれば一生懸命話しかけている様子が伝わるのだろうか。どのくらいのタイミングの反応であれば、生命感が伝わるのか。人の言葉をしゃべらないLOVOTは、「動き」や「表情」だけで伝えなければなりませんが、そここそが、アニメーターの力が試されるところだと思います。
私たちはロボットをつくっていますが、日々向き合っているのは決してロボットではなく、LOVOTと一緒に暮らすみなさまであって、つまり人間です。LOVOTに関わるようになってから、人が何を求めているのか、人はどうすると癒しを感じるのか、逆にストレスだと思うのか……など、人の心理や行動について深く考えるようになりました。
社内で仲間に「伝える」ことも、もちろん対人間です。仲間に自分のイメージや考えを「伝える」努力というのは、じつはLOVOTの動き自体を考えることにも、通じているのではないかなと思います。
在学中には、仲間たちと共同でひとつのものつくり上げていく機会が何度かあると思いますが、「誰かと共につくり上げる」経験は、社会に出てからも役に立つと思います。仲間たちとプランを考えたり、問題をどう解決するか話し合ったりするときは、それこそ「伝える力」が必要になってきます。自分の意見やイメージを人に「伝える」ことの難しさと、大切さを経験できる機会になるのではないでしょうか。
また、たくさん作品をつくり「作品を完成させる」経験も大事だと思います。ときに、作品にダメ出しを受けることもあるかもしれませんが、それは決して才能を否定されたわけではなく、あくまでも作品の欠点や弱点を指摘されているだけ。失敗や欠点があるからこそ、反省や改善もすることができます。その積み重ねで作品の質も上がっていくと思います。
私も普段仕事をしていくなかで、当然うまくいかないことや、指摘を受けることはあります。でも、その指摘を跳ね返し続けていては進歩しません。指摘を受け入れることで開く道がありますから、とにかく「やってみる」ことが大事だと日々感じています。
LOVOTが認識できることがもっと増えて欲しいし、増えていくと思います。そうなってくると、表情も動きもより豊かになり「伝えられること」もどんどん増えていくと思います。たとえば携帯電話は、年々機能性が高まって10年前とはまるで違うものになっています。LOVOTも10年後には、驚くほど成長しているのではないでしょうか。LOVOTには、まだまだ、伸びしろがありますから。
LET’S STUDY!
機械設計、機械工作、電気電子実習まで、ロボット製作を実践的に学ぶ
ロボット技術に加え、IoTやセキュリティなど最先端の技術や人工知能を身につける
MAYA、AfterEffects、Photoshopなどを使用し、その使い方、デザインや映像のノウハウを学習する。